[労働経済]8月の失業率 前月より改善も求人倍率はなお最悪、完全失業者数も10ヵ月連続増加
総務省が2日発表した8月の完全失業率(季節調整値)は5.5%と過去最悪だった前月に比べ、0.2ポイント低下しました。8月は就業者数の減少幅と完全失業者数の増加幅がともに縮小したことで7ヵ月ぶりに低下に転じています。
昨秋のリーマン・ショック以降の急激な雇用悪化にひとまず、歯止めがかかった格好ですが、失業率の水準はなお過去最悪圏にあるといえ、厚生労働省が同日発表した8月の有効求人倍率(同)も0.42倍と前月と変わらず、2カ月連続で過去最低を記録しました。企業は採用に消極的で、雇用の先行きには、なお慎重な見方が多いといえそうです。
完全失業率は、15歳以上の人口のうち、完全失業者数を就業者数と完全失業者数をあわせた労働力人口で割って算出します。男女別にみると、男性は5.8%、女性は5.0%でした。
完全失業者数は361万人で、前年同月比89万人増と10カ月連続で増加し、うち、勤務先の人員整理や倒産などで失業した「勤め先都合」は61万人増、「自己都合」は4万人増でした。
ただ前月との比較では就業者の減少幅、失業者の増加幅がともに縮小。特に医療、福祉分野の就業者が前年同月比40万人増えたことなどが影響し、失業率の改善につながりました。一方、製造業は112万人減と大幅なマイナスが続いており、足元の雇用環境は業種別にばらつきがみられます。
国内景気は持ち直しに向かっており、雇用悪化にもようやく歯止めがかかったとの見方もありますが、先行指標である新規求人数は前月より1.1%減っており、労働市場は簡単には好転しそうにありません。新規求人数の悪化は3カ月ぶりで、求人数が増えなければあふれた雇用は吸収されず、失業率が高止まりする恐れもあります。昨年秋以降は生産が急激に落ち込んだ製造業からの離職者が増え、それを小売業やサービス業などが少しずつ吸収してきましたが、収入減で個人消費は弱含んでおり、内需型産業も人員を絞り込み始めています。
前回の雇用悪化局面では、失業率は2002年6月に過去最悪の5.5%に達したあと一進一退が続き、安定的に下がり始めるまで1年ほどかかっており、雇用調整には時間がかかるため、当面は悪化懸念がぬぐえそうにないといえそうです。こうした中、失業率の低下は一時的で、再び6%台に向けて上昇するとの指摘もでています。
詳細は
総務省HP
http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/index.htm
厚生労働省HP
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/ippan/2009/08/dl/01.pdf
でご確認下さい。