[判例]個人請負も「労働者」 団体交渉権を認める
個人事業主として働く歌手や技術者が、労働組合法上の「労働者」に当たるかどうかが争われた2件の訴訟の上告審判決で、最高裁は12日、就労実態を検討したうえで、いずれも「労働者に当たり、団体交渉権がある」と認める判決を言い渡しました。
ひとつは、INAX(現LIXIL)の子会社INAXメンテナンスカスタマーエンジニア(CE)の訴訟。もうひとつは、新国立劇場運営財団と合唱団員の訴訟でした。
INAXの訴訟では、「CEは会社側の依頼に応じるべき立場にあった」「報酬は会社が等級や加算額を決めており、労働の対価と言える」として労働者性を認め、団体交渉を拒んだ会社の対応を不当労働行為とする判決を言い渡しました。
この訴訟には、東京地裁が2008年にCEを労働者と認め、東京高裁(2009年)が1審を取り消す逆転判決を言い渡した経緯があります。
新国立劇場運営財団の訴訟では、オペラ公演に出演する1年ごとの契約を結んでいた合唱団員の契約を更新しなかったことが不当労働行為かどうかをめぐり裁判になっていました。その女性は1998年から5年間、毎年のオーディションに合格し、契約更新を続けていましたが、2003年に不合格となりました。女性が加入する労働組合が劇場側に団体交渉を申し入れましたが、拒否されました。
1審・2審判決では「労働者に当たらない」と判断されましたが、最高裁は「女性は公演に不可欠なメンバーとして劇場に組み入れられており、事実上、出演を拒めなかった」と判断し、高裁に差し戻しました。