健康保険の被保険者に扶養されている75歳未満の人は、一定の条件に該当すれば被扶養者として認定され、本人が保険料を負担しなくても健康保険の給付が受けられます。
被扶養者として認定されるには、対象者の収入や被保険者との生計維持関係などが基準になります。
被保険者の範囲は(健保法3条7項)
健康保険の被扶養者となるには、①「主として被保険者の収入により生計を維持されている三親等内の親族であること」が条件ですが、さらに②「同一世帯であること」が条件となる親族もあります。どちらの場合も75歳の誕生日の前日まで被扶養者となり、75歳の誕生日以降は後期高齢者医療制度の被保険者となります。
- ①生計維持だけが条件の人
- ●被保険者の直系尊属(父母、祖父母など)
- ●配偶者(内縁関係を含む。但し、双方に戸籍上の配偶者がいない場合)
- ●子(養子を含む)、孫、弟妹
- ②生計維持と同一世帯が条件の人
- ●上記①以外の三親等内の親族(血族、姻族の別なく継父母、継子も含む)
- ●届出をしていないが事実上婚姻関係にある配偶者の父母と子(配偶者が死亡後も、被保険者と同一世帯で生計維持関係にあれば被扶養者となれます。)
「同一世帯」とは、被保険者と住居および家計を共にしていることをいい、同一戸籍内にあるかどうかは問いません。また、被保険者が世帯主であることも要しません。
生計維持認定基準とは(昭和52年、平成5年通達)
「主として被保険者の収入により生計を維持されている三親等内の親族であること」が被扶養者の認定基準となります。具体的には、「①60歳未満は130万円未満、②60歳以上・障害者は180万円未満」であることが基準となります。生計維持については、この基準で年金事務所(健保組合)が認定しますが、妥当性を欠く場合は実態に応じて判断されます。通常見られる例は次の通りです。
- ●被保険者と同一世帯の場合
- ①認定対象者の年収が130万円(60歳以上・障害者は180万円)未満で、かつ被保険者の年収の2分の1未満であること。
- ②認定対象者の年収が130万円(60歳以上・障害者は180万円)未満で、かつ被保険者の年収の2分の1以上であるが、被保険者の年収を上回らない場合は、世帯全体を総合的に判断して、被保険者の収入が生計の中心と認められれば被扶養者になることができます。
- ●被保険者と別居している場合
- 認定対象者の年収が130万円(60歳以上・障害者は180万円)未満で、しかもその額が被保険者からの仕送り額よりも少なければ、原則として被扶養者になることができます。
- 被扶養者と認定する場合の年収の判定は
- 年収の判定は被扶養者の認定を受ける時点の収入(日額・月額)を年間収入に換算した額で計算します。年金・失業等給付は年収の対象となりますが、宝くじ当選等の一時的なものは含めません。
- 被扶養者の届出(健保則38条)
- 採用した従業員に被扶養者がいる場合、事業主は資格取得届に「被扶養者(異動)届」を添付し、さらにその被扶養者が国民年金の第3号被保険者に該当となる場合は「国民年金第3号被保険者種別変更届」も添付して、資格取得後5日以内に年金事務所(健保組合)に提出します。
また、結婚・出産・死亡・就職・退職等で被扶養者の人数に変更があった場合は、その都度5日以内に「被扶養者(異動)届」(該当者は「国民年金第3号被保険者種別変更届」も添付)を提出します。被扶養者の削除をする場合、該当する被扶養者の被保険者証を添付します。 - 夫婦が共働きの場合は(昭和60年通達・平成16年庁発第0617001号)
- 夫婦が共働きならば、双方が健康保険の被保険者となります。その場合、子供や親などがどちらの被扶養者になるかは、次のような基準により判断されます。
- ①原則として年収の多いほうの被扶養者になります。
- ②夫婦の年収が同程度なら、届出により主として生計を維持する人の扶養者になります。
- ③夫婦の双方または一方が共済組合の組合員で扶養手当等の支給が行なわれている場合は、その支給を受けている人の被扶養者とすることができます。
- 健康保険の被扶養者も介護保険では被保険者に(介護保険法9条・10条・150条)
- 介護保険には被扶養者という考え方はありません。従って健康保険の被扶養者も40歳以上65歳未満は介護保険の第2号被保険者に、65歳以上は第1号被保険者になります。
介護保険の第2号被保険者は加入する医療保険の保険料とともに、第1号被保険者は通常は老齢年金から控除する形で介護保険料を負担します。
ただし、協会けんぽの被保険者である介護保険の第2号被保険者の保険料は、制度がカバーするため本人の負担はありません。 - 被扶養者も75歳からは後期高齢者医療制度の被保険者に
- それまで健康保険の被扶養者であった人も、75歳以降は「後期高齢者医療制度」に被保険者として加入し、保険料を負担します。平成22年度も平成21年度と同様、被保険者ごとの収入に応じた保険料負担の軽減措置が世帯単位で実施されています。
- 被扶養者であった75歳未満の人は国民健康保険に加入
- 75歳の誕生日からすべての人が後期高齢者医療制度の被保険者に切り替わりますが、後期高齢者医療制度には被扶養者という考え方はないので、その人の被扶養者であった75歳未満の人は、75歳に達するまでの間、国民健康保険の被保険者となり、保険料を自己負担するようになります。
このように新たに国民健康保険に加入することになる被扶養者のうち、65歳以上75歳未満の人は申請すれば国民健康保険料(税)が軽減されます。(所得割・資産割が当分の間免除、被保険者均等割・世帯別平等割が当分の間5割軽減) - 失業等給付金受給中の被扶養者の扱い 雇用保険の失業等給付(基本手当)は、近い将来に再び就職する人に給付されるものなので現在の失業状態は一時的とみなされ、かつ一定金額を受給しているため、基本手当の受給者は原則として被扶養者とは認められません。ただし給付額が僅少(基本手当日額に360を乗じた額と他の収入を加えた年収が130万円未満)であれば被扶養者になることができます。
必要な添付書類
添付書類 扶養 加入理由 |
年金手帳の写し | 所得証明書 | 給与明細 直近3ヶ月分 |
住民票謄本 | 雇用保険離職票 | 仕送り額 | 年金額の資料 | その他 |
退職(同居) | ○ (配偶者の方のみ) |
○ (同居が条件の方のみ) |
○ (雇用保険に加入していなかった場合はその他) |
○ (退職証明書) |
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退職(別居) | ○ (配偶者の方のみ) |
○ (雇用保険に加 入していなかっ た場合はその他) |
○ | ○ (退職証明書) |
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婚姻 | ○ | ○ | ○ (現在、就労中の方のみ) |
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出生 | ○ ※1 |
○ (出生がわかる資料) |
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国保からの異動(同居) | ○ (配偶者の方のみ) |
○ | ○ (現在、就労中の方のみ) |
○ (同居が条件の方のみ) |
○ (年金受給者のみ) |
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国保からの異動(別居) | ○ (配偶者の方のみ) |
○ | ○ (現在、就労中の方のみ) |
○ | ○ (年金受給者のみ) |
※1 被保険者が女性の場合のみ、配偶者の所得証明書が必要になります。