[判例]非正規の格差是正訴訟 二審で賠償額増額も5年基準が示され困惑
「日本郵便の有期契約社員らが、正社員と同じ仕事なのに手当などに差があるのは労働契約法(第20条)違反だとして、同社に差額分の支払いを求めた訴訟の控訴審判決が、2019(平成31)年1月14日、大阪高裁であり、同社に対し、一審判決の賠償額より約130万円多い約430万円の支払いを命じた。」といった報道がありました。
この訴訟、一審で不合理とされ格差の違法性が認められたのは、年末年始勤務手当、住居手当(住宅手当)、扶養手当(家族手当)の3つの手当の不支給でした。
今回の控訴審判決では、新たに、祝日勤務手当の不支給を不合理とし、さらに夏期冬期休暇の制度、病気休暇の制度の適用がないことについても不合理とし、格差の違法性を認めました。
しかし、扶養手当については、一審の判断を覆し、格差の違法性を認めませんでした。また、夏期・年末手当(賞与)についても、一審と同様に、格差の違法性を認めませんでした。
そして、今回の判決で最も注目を集めたのは、5年基準。
裁判長は、不合理とした3手当と2休暇制度のうち、住居手当を除いたものについて、契約社員の雇用期間が5年を超えるかどうかで格差の是非を判断する新しい基準を示しました。その結果、雇用期間が5年を超えていない契約社員については、格差の違法性が認められませんでした。
原告側の弁護団は、「5年基準を設ける理由を詳細に説明していない」などとし、今回の判決を不服としており、上告する方針のようです。
いわゆる非正規の格差是正訴訟については、平成30年6月の最高裁判決で、「賃金総額だけでなく、手当の内容を個別に判断する」という考え方が示されましたが、今回の大阪高裁での判決でも、それに沿った判断が基本になっています。その中で、5年基準が示されたわけですが、今後の動向が注目されています。